(かつて別媒体にまとめた記事の再掲です。かなり前に書いた記事なので現在では情報が古くなっている可能性があります。)
ボーイング社とエアバス社の飛行機、自分がいまどちらの飛行機に乗っているのか意識することは少ないかもしれない。しかし実は全く異なる2社の飛行機。その背景は設計思想の違いにあります。
飛行機を操縦するのはパイロットか、システムか? #
- ボーイング:操縦するのはパイロットであり、システムは補助道具である。
- エアバス :操縦するのはシステムであり、パイロットは指示役である。
この根本的な設計思想の違いが、さまざまな仕組みの違いに繋がっています。
状況1:異常な操作を続けたとき #
例えば、バンク角(=左右の傾き)を異常なほど傾けようとしたとき。
- ボーイング:警告はでるが、引き続き操作は可能
- エアバス :警告がでて、一定の基準値以上になると操作が無視される
状況2:オートパイロットモードのとき #
車に例えると、自動運転モードのときに車のハンドルが動くかどうか。
- ボーイング:レバーなどもあわせて自動で動く
- エアバス :レバーなどが動かない
状況3:レバーなどを操作したときの入力経路 #
(用語説明)アクチュエーター:電気信号を物理運動に変換する装置。アクチュエータに信号を伝えると機体が動く。
- ボーイング:パイロットの操作は直接アクチュエータに伝わる。
- パイロットの入力が直接アクチュエーターに伝わった後、制御システムが動く。
- エアバス :パイロットの操作は直接アクチュエータに伝わらない。
- パイロットの入力は制御システムに伝わり、そこからアクチュエータに伝わる。
# エアバス
パイロットの操作 -> 制御システム -> アクチュエータ
# ボーイング
パイロットの操作 -> アクチュエータ -> 制御システム
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もっと詳しく #
検索するとより詳細な記事が見つかりますので、興味がある方はぜひご覧ください。
飛行機を操縦するための重要な3要素として、機体を上向きにするか下向きにするかを操作するエレベーター(尾翼に付いてます)、左右の傾きを変えて進行方向を操作するエルロン(主翼に付いてます)、エンジンの推力を変えて前向きの力を操作するスロットル、があります。
パイロットが何か操縦するときは「今から下降したい」とか、「進行方向を東にしたい」とか、「スピードを落としたい」という意図があり、その意図を実現するために操作します。
ボーイングの場合(777以前)は、その意図を実現するためにさきほどの3要素を動かして意図した結果が出るように操作します。どれをどう動かすとどのような結果を生むのかということを理解した上で操作しなければなりません。
(中略)
ボーイングのパイロットは操縦桿を前後左右に動かしてエレベーターとエルロンらの操縦翼面を直接操作し、それにスロットルの操作を組み合わせて意図した機体の動きになるよう操縦しているのです。操作を間違えると意図した動きにならず機体の限界を超えた動きも可能です。例えば操縦桿を右に傾けたまま保持していると機体はどんどん傾きを増し横転します。適切な傾きになったところで操縦桿を戻さなければなりません。意図する進行方向に転回した時点で今度は操縦桿を左に傾け、機体の傾きを水平に戻すという操作も必要です。
一方エアバスには「サイドスティック」という電動車椅子に付いているようなコントーラーと、前後にスライドさせる「スロットルレバー(のようなもの)」で操縦します。これらのコントローラーは先ほどの3要素を操作するものではありません。では何かというと「パイロットの意図」を機体に伝えるためのデバイスです。右に行きたければスティックを右に倒し、上昇したければ手前に引き、速度を上げたければダイアルを回してその意図を伝えます。するとコンピューターがその意図を実現するためにどのように3要素を変化させればいいかを計算し操作してくれます。進行方向を右に90度変えたければスティックを右に倒して保持し、意図する進行方向になったときにスティックから手を離してセンターに戻すだけです。実際にはコンピューターが最適な傾きになるよう、速度と高度は変化しないよう計算して3要素を操作しています。簡単ですね!
この方法(フライバイワイヤー)が意味するのは、人間は3要素をコントロールする手段を持たないということです。予め決められた「限界」を超える操作は不可能で、すべて限界内に収まるよう操作されます。人間の操作によって機体が横転することはありませんし、地面に近づきすぎてもなおスティックを前に倒し続けていると勝手に降下をやめてしまいます。理論上人間の誤操作で墜落することは100%ないことになります。
エアバスのパイロットは機体を直接操作できず、コンピューターに指示するしか手段がないという現実を受け入れなければなりません。もちろんコンピューターのプログラムは人間が作ったものなので完璧ではありませんし、想定されていない事態が起こる可能性もゼロではありません。しかし人間が犯すミスの確率と比べれば圧倒的に少ないレベルまで作り込まれています。
時代の流れはシステムが操縦する方向(エアバス式)へ #
過去の見ると、機体がエアバスだったなら助かったかもしれない、ボーイングだったなら助かったかもしれない、という事故がそれぞれ発生しています。そのため、どちらがより優れていると一概には言えない状況でした。
ただし、システムが進化するにつれ、ボーイング社も徐々にエアバス式の仕組みを取り入れつつあるようです。