フィリピン語学留学と国内英語コーチングスクールを比較
June 29, 2020
私は 2020 年 1 月中旬から 3 月末までの2か月半、フィリピンに英語の語学留学をしていました。当初はもう少しフィリピンで学習する予定でしたが、3月末に新型コロナウイルスの影響により帰国を余儀なくされました。日本帰国後も英語の学習を続けるため、4月からは国内の英語コーチングスクールを受講、6月末までの3か月間そこで学習しました。
つまり、フィリピン留学を2か月半、英語コーチングスクールを3か月経験したわけですが、その結果、それぞれを利用することによる能力の伸び方の違いを実感しました。今回はフィリピン語学留学と国内の英語コーチングスクールでどのように能力向上の違いがあるのか、という比較をしてみたいと思います。
その前に、私が通っていた学校を記載します(具体的に書かないと説得力が出ないと思いますので)。
- フィリピン留学先
- 1校目:MONOL(Monol International Education Institute)
- 2校目:EV ACADEMY(EV English Academy)
- 英語コーチングスクール
- ENGLISH COMPANY
料金はほぼ同じ #
向上する能力の比較の前にまずは料金について見てみます。結論から言うと、料金はほぼ同じです。だからこそこの記事では唯一の違いである、向上する能力に焦点を絞って書いているわけですね。料金は下記の通りです。
- フィリピン留学:学費のほか航空券等を考慮して約 60 万円/3か月
- 英語コーチングスクール:入会金+トレーニング費用+教材費で約 60 万円/3か月
もちろん、フィリピンのどの語学学校に留学するか、国内のどのコーチングスクールを受講するかによって金額は若干変動します。しかし、基本的な相場観はどちらも3か月 60 万円と捉えて間違いはないはずです。実際に私が支払った金額も上記のようになっています。
それではさっそく本題に進みましょう。
フィリピン語学留学の強みはスピーキングと異文化理解 #
一番伸びるのはスピーキング #
英語の4技能(リスニング・リーディング・スピーキング・ライティング)の観点から捉えると、フィリピン留学で顕著に向上する能力はスピーキングです。もちろん、他の能力が向上しないわけではありませんが、特にどの能力が伸びるかと言われるとそれはスピーキング能力になります。
これは、英語だけの環境に常に身を置くことで、起きてから目が覚めるまで(時には夢の中まで)身の回りのことを英語で表現しなければならないためだと思います。
仮に日本国内で1日中オンライン英会話をしても、やはり上記のような英語オンリーの環境は実現できないわけで、そのような環境を作り出せることこそが(フィリピンに限らずですが)語学留学の利点と言えるでしょう。
疑問:リスニングはそこまで向上しないのか? #
さて、スピーキングについて触れたわけですが、皆さんの中にリスニング能力はどうなのか、という疑問を持たれた方も多いと思います。もちろんリスニング能力もかなり伸びます。しかし、これは自分でも意外だったのですが、リスニング能力については後述する英語コーチングスクールを利用した学習の方がより向上すると考えています。というか、実体験がそうでした。
よくある誤解:語学留学はアウトプットばかりだからダメ? #
フィリピン留学に関する批判に、留学先で行うことはアウトプットばかりになってしまう、インプット学習が欠けているため、いつまでもブロークンイングリッシュの適当な会話しかできない、というものがありますが、これは明確に間違いだと断言できます。(フィリピン留学だけでなく、これは語学留学全般に向けられた批判だと思うのですが、私が実際に経験したのはフィリピン留学だけですので、ここではフィリピン留学というように範囲を絞っておきます。)
人間の能力というのはインプット学習を行った際にのみ向上するもので、実際のところアウトプットを通じては能力は向上しないというのはよく言われます。私が受講した英語コーチングスクールでも同じことを言われたので、これは真実なのでしょう。まぁ考えてみれば至極当然な話だと思います。そもそもインプットとアウトプットの定義とは何なのか、という話にもなってしまいそうなので深掘りは控えますが…。
結局のところ、アウトプットは自分の弱点を見つけるための方法です。こういった表現をしたかったのにうまくできなかった、間違った単語を使ってしまった、ということをアウトプットによって発見し、そしてそれを克服するためにインプット学習をするのです。
さて、話を本筋に戻しますが、はっきりと申し上げたいのは、実際にはフィリピン留学でもインプット学習がカリキュラムの中心だということです。皆さんがフィリピン留学にどのようなイメージを持っているか分かりませんが、例えば1日中フリートークしているだけ、という印象があるのでしたらそれは完全に違います。
分かりやすく言うと、フィリピン留学中にやることは日本の学校や学習塾でやることとそれほど変わりません。実際、私が留学していた学校の1日の授業の内容を記載すると下記の通りになります。
- リスニング授業:2時間
- リーディング授業:1時間
- スピーキング授業:2時間
- ライティング授業:1時間
- 発音授業:1時間
例えば、リスニングの授業であれば、ディクテーションのようなこともやりますし、聞いた内容を要約するようなこともやります。リーディングでは文章を読んで質問に答えたり、こちらも内容を要約したりします。スピーキングの授業もフリートークというわけではなく、どのような表現方法があるか、この表現をしたい場合にはどのような文法を使うのかといったことをまず学習し、次にその表現方法を使ってスピーキングをしてみる、といった流れになります。
つまり、普通の学校・学習塾みたいなものなのです。ですから、語学留学はアウトプットばかりだから、という批判は完全に的外れだと思います。
語学以外の学習も重要(異文化理解) #
私は英語能力を伸ばすためだけにフィリピン留学したわけですが、異文化理解について身をもって体験できたことは予想外の、そして重要な収穫でした。これは体験してみなければ分からないと思うのですが、他国・異文化に対する視野が広がります。
自分は日頃ニュースなどをかなりチェックするタイプで、一般的な視野の広さは持っていると思っていたのですが、実際に海外で他国の人と会話し生活を共にすると、自分の視野の狭さに気づかされました。
確かに、ほとんどの人にとってフィリピン留学の一番の目的は英語能力の向上でしょうし、私もそうでした。しかしながら、こういった副次的な学習をもたらしてくれるのもまた海外留学ならではだと感じます。
英語コーチングスクールの強みはリスニングとリーディング #
最も向上するのはリスニング #
英語の4技能(リスニング・リーディング・スピーキング・ライティング)の観点から捉えると、英語コーチングスクールで向上する能力はリスニングとリーディングです。この2つの能力はかなり伸びます。対照的に、スピーキングとライティングはほとんど伸びないと言ってもいいかもしれません。
リスニングのリーディングのうち、より伸びるのはリスニング能力です。意外に思われるかもしれませんが、フィリピン留学よりもリスニング能力の伸びが期待できます。
もちろん、フィリピン留学でもリスニングは伸びますし、会話している相手がどのようなことを言っているのか理解できるようになります。ただし、誤解を恐れずに言うと、フィリピン留学で伸びるのはリスニング能力でもあり、コミュニケーション能力でもある感じます。実際、会話をすると相手の言っていることが結構理解できるようになるのですが、例えばオーディオファイルだけを聞いて理解する、といったような純粋なリスニングだけをやろうとすると、あれ?分からないな、となってしまうことも多いのです。
そういった意味で、純粋に音声のみを認識して理解するというリスニング能力だけでいえば、意外にも国内で英語コーチングスクールを受講した方が伸びるというのが私の意見です。
これは英語コーチングスクールを受講する中で感じたことなのですが、リスニングを伸ばすためにはシャドーイングをすることが最も効果的だと感じます。実際、私が通っていた英語コーチングスクールのカリキュラムの中心はシャドーイングでしたし、他の英語コーチングスクールに通ったことのある友人の話を聞くと、やはりそこのカリキュラムもシャドーイング中心に組まれていたそうです。
付随的にリーディング能力も向上する #
私自身は、英語コーチングスクールでそこまで力を入れてリーディングに関する学習をしたわけではなかったのですが、最終的にリーディングの能力も伸びていました。これはリスニングが伸びた結果、付随的に向上したのだと考えています。
リスニングでは、相手の話すスピードに合わせてすばやく内容を理解しなければいけません。これが徐々にできるようになってくると、面白いことにリーディングのスピードも一緒に向上するのです。結局のところ、耳から情報が入ってこようが、目から情報が入ってこようが、英語の処理と言う意味では同じなのかもしれません。
フィリピン留学をおすすめする人・英語コーチングスクールをおすすめする人 #
さて、これまで見てきた違いなどを踏まえ、それぞれどのような人にお勧めするかを記載したいと思います。
フィリピン留学をおすすめする人 #
- スピーキング能力を伸ばしたい人
- 異文化理解の進めたい人
- 英語学習の楽しさを知りたい人
- 留学を一度も経験したことがない人
スピーキング能力と異文化理解についてはこれまで述べてきたとおりです。それに加えて、英語学習がつまらないと感じている人にもおすすめしたいと思います。日本で英語学習をすると何がおもしろくないのかというと、それは英語が単なる試験の科目の1つにすぎないためです。つまり、点数を取るために勉強しているのであって、実際に使う場面に遭遇しない(できない)ことが原因です。
留学をして他国の人と英語を使ってコミュニケーションをすると途端に英語学習のやる気が湧くと思います。これまでコミュニケーションが取れなかった人たちとも、英語という道具を使えばこんなにも意思疎通ができ、仲良くなれるのかということが実感できます。実際、私も留学をしてこの経験をし、英語学習が楽しく感じるようになりました(日本に帰ってきてからは、やはりつまらなく感じてしまうようになりましたが…)。
ちなみに、どの国の人も英語を勉強するために留学してきています。つまりみんな英語が苦手であり、能力はどんぐりの背比べということです。みんなたどたどしく会話するのですが、それでも普通にコミュニケーションできるものです。そして、もっとコミュニケーションしたいからもっと英語を勉強しよう、という動機になります。
そして、留学を一度もしたことがない人にもぜひ進めたいと思います。これまで書いてきたような経験ができるのも留学ならではです。人生の中で留学が経験できる機会というのは限られていますから、もしまだ経験したことがなく、かつ行ける状況にあり、そして迷っているのであれば1度留学を経験することをおすすめします。
後述する英語コーチングスクールの利点は、国内にいても英語が学習できるということです。つまり、留学よりも実行しやすい選択肢であり、来年だろうが再来年だろうが、受講する機会は比較的数多くあると思います。であれば、行けるうちに留学をしておき、その先のどこかで、英語コーチングスクールも受講してみる、といった選択も有効でしょう。
英語コーチングスクールをおすすめする人 #
- リスニング能力を伸ばしたい人
- リーディング能力を伸ばしたい人
- TOEIC L&R(TOEIC Listening & Reading Test)の点数を向上させたい人
リスニング能力とリーディング能力についてはこれまで述べてきたとおりです。そして、日本人の英語学習とは切っても切れない関係にあるのが TOEIC L&R(以下、単に TOEIC と記載)ですが、この点数を伸ばしたい人はフィリピン留学ではなく英語コーチングスクールに通うべきです。
TOEIC の点数によって英語ができるかどうかを判断するという日本の運用について私は否定的ですが、現状の社会がそのような形になってしまっている以上、英語能力の水準を証明する際には TOEIC から逃れることはできません。
一旦スピーキングとライティングは脇に置いておいてよいから TOEIC の点数をあげるのが目的だという方は、フィリピン留学ではなく英語コーチングスクールをおすすめします。
フィリピン留学と英語コーチングスクールを比較すると、TOEIC の点数は後者を利用した方が確実に伸びます(もちろん前者も伸びないわけではありませんが)。フィリピン留学の学校の中には、TOEIC の点数を向上させることを主目的とした学校も一部ではあるようですが、そうであればわざわざフィリピンに留学なんてせずに、シンプルに国内で英語コーチングスクールを利用した方が合理的です。
なお、同じ TOEIC でもスピーキングとライティングの能力を測る TOEIC S&W(TOEIC Speaking & Writing Tests)の場合は、国内の英語コーチングスクールでは向上させることが難しいでしょうから、他の選択肢を考えなければいけません。ただ、申し訳ありませんが、これに関して私は良い解決策を持ちあわせていないため、何か代替手段を提示することはできません。
まとめ #
結局のところ、どちらが正解でどちらが間違いという話ではなく、その人が何を求めるかによって最適な選択が変わってくるということです。だからこそ、フィリピン留学と英語コーチングスクール、どちらもが廃れることなく今日まで残り続けているのだと思います。
皆さんはなぜ英語を学ぼうとしているのか、それを今一度考えたうえで、満足のいく選択をしてくだされば幸いですし、その決断にこの記事が役立てば嬉しい限りです。